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幾寅駅 – 鉄道員(ぽっぽや)ロケ地

幾寅駅 – 鉄道員(ぽっぽや)ロケ地

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Open Panorama

浅田次郎原作、高倉健主演の映画「鉄道員(ぽっぽや)」のロケ地、幾寅駅である。映画は、冬の幌舞駅(幾寅駅)を舞台に、まもなく定年となる駅長、佐藤乙松(高倉健)の物語。高倉健、大竹しのぶの存在感はもちろんであるが、広末涼子の初々しさが印象的である。

幾寅駅は、JR北海道根室本線の駅で、北海道の中央に近い南富良野町にある。いくら、なんちゃっ鉄な私でも、ぽっぽやの聖地巡礼には、やはり鉄道であろう。丁度、道央圏1日フリーきっぷ(土日祝)というのが有るではないか、しかも2,200円也と、何かとお寒い?この時期にありがたきかな。

鉄道員(小説)

鉄道員(小説)

札幌から幾寅駅までは、函館本線〜千歳線〜石勝線〜新得駅経由〜根室本線(上り)、函館本線〜滝川駅経由〜根室本線(下り)の二つのルートが有るが、フリーきっぷに急ぎは禁物、札幌6:58分発滝川行きに乗る事に。

滝川までは、1時間40分弱の道程である。札幌駅を出て直ぐは駅間にも家並みが見られたが、暫くすると、だだっぴろい雪原をまっしぐら状態となり、その所々では、風で雪が舞い上がり、真冬の北海道を実感である。車外の状況とはうらはらに、車内はかなりのポカポカで身体はユルユル。朝が苦手な自分は、車両の心地よいガタゴト振動も相まって、うとうとしていると、あっという間に滝川である。

↓札幌から幾寅駅までの経路

キハ40 1776

キハ40 1776

滝川では、約1時間の待ち合わせがあるので食料調達でもと、駅の周辺をぷらっと。駅に帰るとホームには既に根室本線・釧路行きのキハ40がスタンバイ状態、中ではおばちゃんたちの楽しそうな話し声が響いていた。

このロケ地巡礼の前、映画を改めて観直したのだが、折角なので道すがら、もとい、この場合は鉄すがらか?原作も読んでみる事にした。恥ずかしながら読書が苦手な私は、映画の原作を読むのは初めてである。浅田次郎の「鉄道員」は1997年に刊行された短編小説集。短編で、おまけに直木賞受賞作品と言うだけあって、おもしろくてアッという間に読み終えた。

そう言えば、その昔「読んでから見るか?見てから読むか?」なんてコピーがあった。今回は、見てから読んだ訳だが、読んでいる時には、映画のシーンが頭の中を駆け巡っていた。きっと、会話の内容を含め、映画がかなり原作に近いためだろう(ただし、一部追加された脚本部分あり)。出演者が個性的な役者ぞろいということもあったかもしれない。小説を読んでいて、会話部分になると急に役者たちが耳で囁く感覚であった。

根室本線山部駅

根室本線山部駅

途中、富良野駅を過ぎると、盛んに盛り上がっていたおばちゃんたちを含め多くの乗客が下車し、しーんとなった車内には列車の音が響くのみであった。車窓には、山脈に囲まれた雄大な景色が広がり、列車は、その山々に分け入っていく感覚だ。

目的地近くのトンネル付近では、鹿の群れを見る事が出来た。帰宅後分った事だが、幾寅の名前の由来は、多くの北海道の地名同様アイヌ語にあり「ユク・トラシ」とのこと。ユクは鹿、「ユク・トラシ」で「鹿ののぼるところ」らしい。

↓富良野駅発車時におけるキハ40形の車内音

ほどなくして目的地「幾寅駅」に到着、札幌から約5時間のプチ旅行であった。一緒に降りた数名の乗客とともに映画のシーンに登場したホームの階段を下り駅舎に向かう。ところが、他の人々は駅舎の横をすり抜けて行ってしまった。きっと地元の人たちなのだろう、もちろんワンマン運転のため改札も不要で駅舎を通る意味も無い訳だ。よく見ると、駅舎の看板も「幌舞駅」となっているし、、、

鉄道員ロケ地セット - 平田理容店

鉄道員ロケ地セット – 平田理容店

駅舎内は、想像していたよりサッパリとした雰囲気である。待合室の奥に映画の展示コーナーがあり、テレビモニターからは映画の一場面が繰り返し流されている。駅前広場に出ると、映画の舞台として使われた「だるま食堂」等のセットや撮影用に改造されたキハ40形764の一部が展示されている。

映画が撮影された1999年から既に10年以上経過しているためか、少々くたびれた感じがするのと、内部に入れないのがちょっと残念であった。まあ、運営側のコストを考えると、無人の展示施設にそれ以上求めるのは難しいのかもしれない。しかし一方で、駅のホームから見る山々は健在で、映画のシーンを思い起こさせてくれた。

映画では、内容的にも?夜のシーンが多かったので、夜の駅舎も体験してみようと粘ってみた。しかし、残念ながら、駅舎玄関の裸電球は点灯せず、少女も現れず?駅舎には、オヤジの影が映るのみであった。帰りの列車は、かなり快適で小説の続きがはかどった。後で調べてみるとキハ150形のようで、キハ40形より新型らしい。

蛇足だが、
この短編小説集「鉄道員」には、「鉄道員」の他、「ラブレター」「角筈にて」「うらぼんえ」等の短編がある。巻末の解説によると、この小説のファンには前述の四編それぞれを推す四派がいるそうだ。私自身、おもしろかったのは、それぞれ違った映像体験?をしたことだ。

先にも書いたが「鉄道員」では、頭の中に映画のシーンが写る。「角筈」では、舞台となった街が馴染みのある場所だったこともあり、具体的な通りや場所が頭の中に鮮明に甦った。ちなみに角筈とは、今の西新宿だそうだ、知らなかった。「ラブレター」「うらぼんえ」の舞台は、ほとんどが知らない場所で、頭の中には、自分自身が作り上げたであろう架空の街並が勝手に現れた。ただ、実際に近いイメージが呼び起こされるから面白いと言う訳ではなく、勝手に想像したイメージでも、頭の中で展開する映像はそれぞれおもしろかった。考えてみると、音楽でも映像が思い浮かぶ作品はとても印象的である。やはり、人の琴線の先には映像が繋がっているのかもしれない。

話はさらに脱線するが、
振り返って我身を考えてみた。バーチャル、、、なんて言っていても、ただ、受け取る側が分りやすいと思い込み、情報をテンコ盛り状態にすることがなんと多かったことか。それでは琴線に加重がかかり過ぎ、切れてしまっていたのかもしれない、、、きっと。伝える目的は違えども、受け取る側の想像を膨らませる力量が大切なんだと、今頃になって思うのである。(撮影:2010年2月27日)

【関連情報】
Wikipedia:鉄道員(小説)
Wikipedia:幾寅駅
Wikipedia:根室本線
Wikipedia:国鉄キハ40系気動車
Wikipedia:JR北海道キハ150形気動車
YouTube:鉄道員

  • コメント ( 2 )

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  1. s.sakai

    北国の日暮れ、寒さが伝わってきました。
    来冬はうっかり寝過ごして終点釧路のパノラマをお願いします (笑)

  2. keiji

    そーすけくん、ぽにょ(くど)
    > 寒さが伝わってきました。
    撮影を終え、列車が来るまでの2時間あまり、最初はじぃーと、でしたが、ついに耐えきれず、駅舎内を意味も無くグルグルと、、、ストーブが無かったのが計算ガイでした。

    > 来冬はうっかり寝過ごして
    十分有り得ますが、この場合、気力体力十分、ヤングな(ふるぅ)そーすけくんの楽しみにと、次回の來道時にいかがでしょ、ナハァ、ナハァ(ミツオふう)

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