松原理容
名古屋駅からほど近い那古野地区。近代的な建物の立ち並ぶ表通りから一歩狭い路地に入り込むと、そこには城下町の風情が残る街並みが今でも残っている。瓦屋根の長屋、白壁の土蔵、神社や地蔵。そして、見上げると軒下にはこの地域独特の屋根神さまが祭られている。
そんな通りの一角にある松原理容。明治時代からの老舗で現在の店主は三代目の松原房利さん、ちょっと甲高い声で喋る名古屋弁がとても魅了的な職人さんである。
店内は、創業当時から残る大理石の洗髪台など、年季の入った道具たちで溢れている。撮影をお願いすると「被写体になる柄じゃないですけどねぇ…」と、チョットはにかみながらカメラに納まってくれた。
ところで、
理容店の店先でくるくる回る、あの独特な看板「サインポール」が気になったので調べてみた。
昔、ヨーロッパでは理容師が外科医も兼ねていて(理容外科医)、サインポールの赤は動脈を、青は静脈を、そして白は包帯を表しているらしい。
日本では明治維新以降、武家社会解体のための「断髪令」が出され、当時流行った歌「散切り頭を叩いてみれば、文明開化の音がする」に象徴されるように理容店が急速に広がっていったようだ。
そういえば、
理髪師と言えば、革のベルトでシュッ、シュッとカミソリを研ぐ姿がいかにも職人らしく印象的であったが、どーも最近見かけない。
そのことをなじみの理容「男爵」のオヤジさんに聞いてみると「最近は、HIV等の感染症予防のため、使い捨てのカミソリなんだよねぇ」なんだそうだ。古くても手に馴染んだ道具が職人の手から離れていくのは傍目から見てもなんだか寂しいものである。
[松原理容]
場所:愛知県名古屋市中村区那古野1丁目45
撮影:2011年10月03日
機材:Canon EOS 5D +Tokina AT-X 107 DX Fisheye + Agno’s MrotatorTCPshort
アプリ:Lightroom, Photo Shop, PTGui Pro
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