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旧北炭清水沢火力発電所

旧北炭清水沢火力発電所

Open Panorama夕張市にある旧北炭清水沢火力発電所である。2011年秋、ここで開催されたNPO炭鉱(やま)の記憶推進事業団主催のアート展、夕張清水沢アートプロジェクトを訪ねた。

旧北炭清水沢火力発電所は、旧北炭が自社の炭鉱で使用する大量の電力を賄うため大正15(1926)年に建設され、最大74,500キロワットを出力した。1991(平成3)年に廃止され、現在は、リサイクル業者が作業所として使用している。

札幌から車で1時間半程度、石勝線「清水沢駅」にほど近い会場のセンターハウスで受付を済ませ会場へと向う。ゲートをくぐり細い山道を下ると巨大で、ちょっとオドロオドロしい姿の建造物が見えてきた。近くまで寄ると、壁には穴、剥き出しの鉄筋、割れた窓、まるでSF映画の決闘シーンにでも出てくるような巨大な廃墟といった感じである。

発電所一階にある配電盤

発電所一階にある配電盤

早速、
建物内に入ると、この展示のアートディレクターで、札幌市立大学デザイン学部教授 上遠野 敏(かとおの・さとし)氏が会場内を案内してくださった。髭がとってもよく似合う上遠野先生、この清水沢をはじめ、赤平炭鉱、幌内布引などの展示も手がけている。いずれもアートの力で炭鉱の記憶を掘り起こすプロジェクトだ。

先生の話を聞きながら展示された作品を観て回ったが、どれも、自己主張しつつも、驚くほど器(建物)に溶け込んでいた。そして、作品を通して当時の風景を想像し、想いを馳せることが出来た気がする。

敷地西側にある運炭詰所入口のプレート

敷地西側にある運炭詰所入口のプレート

そう言えば、
横尾忠則氏が雑誌のインタビューで「経済至上主義ともいえる現代において、人は生産性や効率性にとらわれ、目的のあることしかしなくなってしまった。その結果、自らの不自由を作り出し、そこに矛盾や閉塞感を覚えてる。…中略…そういう時代にあって無目的な芸術に触れると、「何だ、こんなことしていいのか」という心の自由、精神の開放を感じるはずだ。」と言っていた。

この発電所は、炭鉱の発電という目的の為、しこたま働き、そして石油へのエネルギー転換とともにその目的を失い、まさに無目的な状態となった。その意味ではアートの器としてはもってこいだ、というか、もしかしたら、それ自身が既にアートなのかもしれない。

最後に「沈む夕日が綺麗ですよ」っと奨められた炭住裏のズリ山に上り、大自然に囲まれ、でっかい夕日を独り占めした後、コオロギの声に見送られ帰路についた。

ところで、
この旧北炭清水沢火力発電所、所有しているリサイクル業者がアートプロジェクトに理解を示し、一時、解体を中止している。そして今年は、「清水沢アートパワープラント」(2013年7月20日〜11月9日)として開催予定である、興味のある方はぜひ。

ちなみに、
当プロジェクト主催の炭鉱の記憶推進事業団は、このプロジェクトが評価され、今年(平成25年度)の「都市景観大賞 景観教育・普及啓発部門」優秀賞を受賞している。(2011年9月24日撮影)

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